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<<   作成日時 : 2004/10/15 13:20   >>

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 時々、今はなき実家の夢を見ます。
 今はなき、と言いますのが、実家は20年ほど昔に土地ごと人手に渡り、建物も建て替えられて、すっかり余所のお家なのです。
 ですから帰りようもないのですが、夢の中では微妙に外観や間取りを変えつつも、ほぼ昔のままに懐かしい故郷にたたずんでいます。
 
 自室は2階の東北向き四畳半の洋室でした。
 そんな暗くて狭い部屋に、今で言う「捨てられネーゼ」がよくもご機嫌で棲んでいたものだと我が事ながら感心するばかりですが、狭くてもモジュールは京間だったのでしょう、季節の折々に家具の配置替えを楽しむこともできる、心地のいい部屋でした。
 つましい生活の上にも贅沢の嫌いな両親でしたので、家の中は質素で無価値なものばかり。自室にもガラクタしかありませんでしたが、最近見る夢の中では違います。
 いかにもマットの良さそうなこんもりしたベッドの上に、手の込んだパッチワークキルトのスプレッドがきちんとかかり、壁はシックな花柄のボーダーで、窓辺の猫足チェストの上にはアンティークの雑貨が可愛く並べられています。
 明るく華やいだ色調ではなく、ちょっと落ち着いた暗さのあるインテリアで、ブロケード織りのカーテンは閉めきられていて──本当にそこは、ただくつろぐだけの場所なのです。
 もしも家を離れずにずっと住んでいたなら、きっとそんな風にしつらえたいと言う願望の現れなのでしょう。

 かつてはその狭い部屋が自分だけの宇宙で、現在の職業につながる趣味の数々や勉強に勤しんでいたわけですが、今は自分の家を持ち、狭いながらも専用の仕事場があります。贅沢なことに自分だけの寝室も。
 でも今は昔と違い、家でまったく一人きりになるということがありません。同じく自宅仕事の夫と寂しんぼの犬はほぼ24時間一緒ですし、当分就学年齢の子供もいますし、月に数日はアシスタントさんが泊まり込む賑やかな家です。
 それに不満があるわけではないのですが……。
 創作のために一人きりで意識の深層に潜っていく、あの静謐な宇宙を知っているからには、まったく自分を閉ざす空間というのは時に必要なのかも知れません。
 だから夢の中のあの部屋は、ただ一人でくつろぐためだけに存在していて、いつでも帰りを待ってくれているような…そんな気がします。

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